久住有生

久住 有生(くすみ なおき)


 1972年、兵庫県淡路島生まれ

日本を代表する左官職人として国内外で活躍する久住有生。兵庫県淡路島、祖父の代から続く左官の家に、

1972年に生まれた久住は、3歳で初めて鏝を握った。幼少の頃から名工な父の下で左官の訓練を重ね、華道の先生である母からは日常生活の中で美意識を吸収した。高校3年生の夏、スペインでアントニ・ガウディの建築を見て、その存在感に圧倒されると同時に、細部まで計算しつくされた建築の美しさを左官でも表現できるのかという試みに挑みたいと思い、左官職人になることを決意。日本各地の親方について修行し、施工経験を積み、2009年、左官株式会社を設立。現在は伝統建築物の修復、復元作業のほか、商業施設や教育関連施設、個人邸の内装・外装など幅広く手がける。また、国内外の展覧会で大型の彫刻作品などを発表し、2016年には、国連日本加盟60周年記念インスタレーションをニューヨークの国連本部で製作した。

個展では、建築の壁とは異なる額装による表現にも取り組んでいる。これらの評価を得て、G7広島サミット2023の会場施工にも携わる。

久住は、京都の伝統建築を手がける親方のもとでの修行時代、何百年も経過した建物の修復工事で壁を剥がしながら、先人の仕事に触れ、彼ら職人たちがいいものを残そうしてきた結果が目の前にあることに気づき、自分もそうした歴史を継承する一人になりたいと考えた。

現場では企画段階から参加することが多く、デザインも提案し、伝統的な左官技術とオリジナリティーに富む

アイディアが高い評価を受ける一方、アート作品でも注目される久住はいずれにおいてもやわらかい土の存在感を大切にし、日差しや風など現場の自然から感じたことを表現している。

さらに自由な発想を形にする額装作品では、素材が秘める力を引き出し、ぬくもりと落ち着きで空間を彩る。

心地よさを広げる作品は、研ぎ澄まされた技術と感性の美しさの結晶である。